郡山美術館アルフォンス・ミュシャ展。那須与一の人物録読破。
良い天気が続いたと思えば寒波がやってくるの繰り返し。今年の初め頃はスノータイヤを履かせた原付で喜々として雪道を走りましたが、もう疲れてしまいました。
ばくさくの機械小屋で冬眠させてる我がホンダのNC700Xは去年でオドメーター70000km。今年はホンダが新しいモデルをリリースするということで、こっちの初代モデルは3世代落ちとなりました。すっかり時代に取り残され、くたびれてきたしがない大型バイクですが、もう少し一緒につきあってもらおうと思います。
いつも小説ばかり読んでたのが、実家の祖父から譲り受けたこの歴史書を読むことになってみると本当に手こずりました。
私の実家のルーツである那須与一の人物録ではあるのですが、ご丁寧に日本の歴史の形成から始まって那須一族の下野地方(栃木県那須エリア)への定着を下地に平家物語の時期と源平合戦が終わった後の那須与一がたどった遍歴を追って語られていて、かなり緻密な実録となってました。
吉川英知の小説の新平家物語では那須与一は左遷されて領地没収されてしかも病を患ってと言った悲壮な境遇を記憶してましたが、実際は反対で頼朝に厚遇され安泰だったとわかって意外でした。
那須地方は狩り好きな頼朝にとって恰好な狩り場で、那須与一は頼朝の狩猟行事を統括する重要な役割があったとあります。
それが、大規模な狩猟を執り行っているときに頼朝の重臣配下の従者と那須与一配下の従者が流血沙汰の乱闘を引き起こして、那須与一はその責任を取って越後(新潟県)の五十嵐家の元に配流となったということでした。
那須与一は一緒に連れてきた奥方との間に彼の地で男子を設け、その子を五十嵐家の息女と結ばせて血縁関係を築いたのが今に続く五十嵐家と那須与一のゆかりの発祥なのだそうです。
与一は流罪の期間が済むと那須地方に戻り、仏門に入って法然門下にて出家し、旅に出て源平合戦の激戦地を辿ったそうです。
最期の地は伊予国(愛媛県)にあり、地元の人たちに慕われる中で息を引き取ったのが最後らしいです。でもお墓は(但馬)兵庫県にあったりと、どこかで読み違えたのかわかりません。
とにかく、バイクシーズンになったらバイクで那須与一ゆかりの土地や神社などを巡りたいとの気持ちを持ちました。
那須塩原の温泉神社は扇の的を射るときに与一が祈りを捧げたとても重要な神社。いつもツーリングで通り過ぎてばかりでしたが、次回はしっかりお参りに行きます。
長野県の諏訪湖。源平合戦を終えて与一の兄たちが那須に帰る途中、頼朝を警戒して身を潜めていた場所です。
香川県にある矢島古戦場。扇の的の現場を巡りたいものですが、遠すぎるのでコロナの感染状況次第ではあります。
福島県の郡山市立美術館で開催しているアルフォンス・ミュシャの展示会に行ってきました。テレビでコマーシャルを流したりと熱心な宣伝には熱の入れようがしれます。
ミュシャはスラブ文化の人間で、ヨーロッパと言うよりどちらかというと東欧の人。彼のコレクションには江戸時代の浮世絵がいくつか所蔵されており、浮世絵の影響が輪郭線を強調する作風と結びついていると思いました。
それが昭和後期にはミュシャの絵に触発された漫画家が多数現れ、そのマンガを身近にして育った私のような人間にはミュシャの絵はどこかで見たことのあるような、昔の絵では無くつい最近のアーティストの作品かと思える親近感がありました。
ミュシャが生きた時代はまさに大量消費社会の始まりのタイミングであり、アートの分野も重厚なものから手軽なイラストとしての分野への変遷が始まる時期でした。ミュシャの作品はそんな昔ながらの重厚な絵画と、大量印刷向けで納期の都合に適したイラストの中間にあるものなのだと思います。それが、グラフィティというものなのでしょう。
しかし、綺麗に描かれたマダムの絵ばかりが続くと何か酔ったような不快感がこみ上げてきます。そんなときに老人とか軍人の絵が目に入ると強いアクセントとして心に残ります。
美術館を出た後も心に残るのは、30年戦争の頃の猛将ヴァレンシュタイン将軍の絵でした。ミュシャが歴史物の出版物の挿絵として依頼されたものらしいですが、戦記物が醸し出す渋さは私にとってかなりの好みです。
この展示会の目玉はフランスの演劇界で女王的存在であったサラ・ベルナールなるお人を描いた作品なのでしょうが、私は頭痛しか感じませんでした。
女性美の描き方のワンパターンさですが、少年誌の作者に美女を描かせると髪型くらいしか違いが無くてほとんどみんなが同じ顔になるのと一緒です。
お土産にポストカードを三枚購入。帰りには美術館のカフェでスイーツを注文。メニューは甘いものばかりで、塩分ものはパスタが一品だけでした。こういうところに来る人は甘党に偏っているのでしょう。
注文したのは旬のフルーツのパンケーキ。高いですがなかなかボリュームが多く、立ちっぱなしでギャラリーを長時間牛歩した身体の疲労にはうれしい一品です。
ブレンドコーヒーはセブン珈琲に比べると苦みも渋みもかなり控えめに抑えられ、香りも弱いんだけど濃厚さだけが口と喉に残る感じ。
女性向けとしてはとても洗練されている味わいでした。塩分摂取に積極的な労働者階級というより、あっさりした知的な人向けって感じです。
帰り道はひたすら下道。
美術館を出たのが退勤ラッシュ前だったので細い田舎道を選んで辿り、熱海町前で49号線に合流。なんとか都会の渋滞は避けて帰り着くことが出来ました。
そういえば美術館に行くというのが大学生の頃以来で、社会人になってからはまったくありませんでした。
たまにはこういうのに触れることも、仮にも美大出身の身としては栄養になる筈なので、これからはもう少しだけでいいから増やして行くのも良さそうです。